自社ブランドを立ち上げたものの、なかなか軌道に乗らず困っている方も多いのではないでしょうか?近年では、D2Cでの販売が一般的になっており、個人でもブランドを立ち上げ、販売ができる時代になりました。その結果、アパレルやブランドの販売競争は激しくなっています。
本記事では、ブランド立ち上げにとって重要な考え方や販売戦略を、事例を通して解説していきます。中には売上が数倍になった取り組み実例も紹介しているので、ぜひブランド立ち上げの参考にして売上をUPさせてください。
ブランドを立ち上げに必要な8つの手順
ブランドを立ち上げるまでの手順を8つ解説していきます。特に、事業計画が練りこまれていなかったり、正しい市場調査ができていないと成功には近づけません。立ち上げ段階で緻密な戦略を立てることが成功につながるので、ぜひ各過程の基礎をここで押さえていきましょう。
①事業計画の立案、企画書の作成
まずは、事業計画を立てるために、まずは参入するマーケットを選定しましょう。ただし、マーケット選定には十分に注意を払う必要があります。あまりにも狭い、ニッチすぎるマーケットだと、そもそも消費者が少ないため売上も立ちづらくなってしまうためです。
マーケットの選定が完了したら、企画書を作成して大枠の商品イメージが掴めるようにしておきましょう。
下記の画像は、実際に数百万〜数億の売上を上げたマーケターが使用していた事業計画書です。収支計画を立てる際にとても役立つシートですので、事業計画を立てる際はぜひ参考にしてください。
【実例を紹介】マーケット選定の失敗例
ここからはニッチなマーケットを選定してしまったが故に失敗した際の実例を2つ紹介します。
①限界利益を超えられなかったケース
広告の投資対効果は良いものの、売上のトップラインがいかずランニングコスト(人件費などの固定費)を加味した際に、限界利益を超えられなかった。
②流行を追いすぎたケース(ミサンガウォッチ・マスクなど)
広告の投資対効果はよく初動は利益が出るが、後発の参入企業が増えた結果、競争に負けるケース。
ペルソナ設計とSTPを明確化せずに流行だけを追い求めすぎた結果、最終的に値引き合戦に陥り資金繰りが悪化することも。
ボリュームディスカウントを狙い在庫を大量に抱える戦いになるため、引き時を間違えると無駄な滞留在庫だけが残るため注意が必要。
②フレームワークを使用してブランド戦略を策定する【最重要】
最も重要なのが、ブランド戦略の策定です。競合調査を行なったうえで、USP(自社商品だけの強み・競合との差別化ポイント)を明確に言語化できるようにしましょう。「USP(差別化ポイント)が明確でない=競合の商品と変わらない」ことになり、価格以外での競争が非常にしづらくなります。
必ず、競合調査を行い比較したうえで自社の立ち位置や強みを明確にしておくことが重要です。
なお、競合調査は「3C・4P分析」や「SWOT分析」などのフレームワークを使って、論理的に比較をしましょう。下記でおすすめのフレームワークを目的別に紹介しているので、ぜひ活用してみてください。
- 自社の強みや弱みを洗い出したい場合に最適:3C分析
- 企業課題の発見・経営戦略の策定に最適:SWOT分析
- マーケティングの課題を洗い出したい場合に最適:4P分析
- 原因追求を行う時に最適:ロジックツリー分析
もし、「『自社製品の圧倒的な強みは?』と聞かれて即答できない」状態でしたら、ぜひ弊社にご相談ください。さまざまな業界・業種のご支援を経験した担当者が、マーケット分析・競合調査をサポートいたします。
「USP(強み)を一言で語れること」はブランドの立ち上げを成功させる重要なポイント
売れる商品を作るために最も重要なのは「USP(独自の強み)」を一言で語れるかどうかです。
前述したように、差別化ができていないと価格以外での勝負が難しくなります。商品の魅力が伝わらなければ、マーケティングを行っても思ったような効果は出ないでしょう。
USPの確立はブランドの拡販の”土台”となる要素ですので、中途半端な設計にならないようにしましょう。
③ブランドコンセプト・ブランドネームの決定
次は、ブランドコンセプトやブランドネームを決めていきましょう。「ブランドコンセプト」とは、ブランドの価値・目指す方向性を言語化したものです。先ほど決めた「商品の強み」をもとに、「どんな人に」「どんな価値を届けたいか」を考えます。考える際は、5W1Hの考え方を活用するのがおすすめです。
ブランドコンセプトを考える際は、下記の5点を行いながら決めていくのがおすすめです。
- 利用シーンの分析
- 競合のプロダクトとの比較
- ターゲット属性の分析
- プロダクトのポジション軸の明確化
- ポジショニングマップによる競合分析
それでもコンセプトが決まらない場合は、USPが定まっていない可能性があります。そのまま立ち上げを進めてしまうと、競合との違いがなく魅力的でない商品が出来上がってしまう可能性が高いです。再度、USPを明確にしてからコンセプトを考えるようにしましょう。
また、ブランドネームは、ブランドコンセプトを連想できるような名前にするのが一般的です。その商品の特徴や単語を書き出し、さまざまな言語で書きだしてみるのをおすすめします。
④デザインの作成
ブランドコンセプトが決まったら、どんな商品を作るのかを決めていきます。いきます。ここは、「どんな形にするのか」「どんな色にするのか」などを決めていき、商品を形にしていく段階です。
具体的には、下記の流れでデザインを作成します。
- 大枠のデザイン作成
- ディテール(細部)のデザイン作成
- 素材・原材料の決定
- デザインに関する指示書の作成
注意点として、ただおしゃれなデザインにするのではなく、コンセプトやターゲットを考慮して逆算思考でデザインを作成しましょう。商品を届けたい相手の好みや流行に合わせてデザインを作ることも、とても重要な戦略です。
⑤生産先の選定
次は、生産を行うための工場を決めます。
- デザイン通りの商品作成が技術的に可能か
- 1商品あたりの生産コストがいくらかかるのか
複数の工場に見積もりをとって、上記の2点を中心に比較しましょう。通常、ロット数を増やせばコストを抑えられますが、多くの在庫を抱えることになってしまいます。予算や販売戦略を元に、無理のないロット数で発注しましょう。
⑥サンプル発注
生産先が決まったら、本生産に入る前にサンプル品を発注します。万が一デザインに問題があった場合、本生産を行うと取り返しがつきません。一度サンプル品を作成してみて、設計や出来上がりに問題がないことを確認してから本生産を行うようにしましょう。
⑦配送の体制を整える(フルフィルメント)
生産した商品の保管・配送を行なってくれる倉庫(フルフィルメントサービス)を探す必要があります。発送までには下記のような工程が必要で、自社で行うにはかなりの労力がかかります。
- 在庫管理(保管)
- ピッキング
- 梱包
- 配送
- アフターサポート
フルフィルメントサービスを活用して、マーケティングなどの重要な業務に専念できる体制を作りましょう。
なお、立ち上げ初期はAmazonのFBAなどの従量課金型の倉庫を活用することがおすすめです。売上が立ち、予算も増えてきたら、大型倉庫や独自の配送システムの導入を検討してみてください。
▼おすすめのフルフィルメントサービス
- オープンロジ:D2Cスタートアップにおすすめのフルフィルメントサービス。物量が増えると運賃率(タリフ)の提示をしてくれることもある。
- ダイアログ:卸量が多くB2Bのビジネスを行なっている企業におすすめ。企業ごとにプランのカスタマイズだけでなく、季節変動に合わせた計画的な物流拠点の切り替えなどの提案もある。物流を戦略的に構築することが可能。
⑧販売・マーケティング戦略を実行する
これで、商品の準備ができました。ここからはいよいよ、販売・マーケティングを行い売上を立てていく段階です。設計した事業計画に基づいて、販促活動を行なっていきましょう。
なお、立ち上げ初期の段階では、小規模で販売を進めていくことがおすすめです。
事前に戦略を立てていたとしても、予想が外れることは存分にあり得ます。はじめは小規模でPDCAを回していくことで、失敗のリスクを減らせます。
実力のある大手Webコンサルティング会社について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
「【2022年】実力のある大手Webコンサルティング会社5社をプロが徹底比較!料金の相場や選び方も併せて解説」
【実例あり】ブランド立ち上げに成功した実例3選
ここからは、ブランド立ち上げで成功した事例を3つ紹介していきます。どちらも商品自体は特殊なものではありません。しかし、見せ方の工夫やUSPの明確化によって、売上が数倍に増えた事例です。
ぜひ、マーケティング施策やUSPを考える際の参考にしてみてください。
タイパンツ:夏フェス用グッズとして販売
立ち上げ当初は普通のタイパンツとして販売していました。しかし、商品自体はエスニック系の店舗ならどこでも売っているようなもので、全く売れていない状態でした。
そこで、「夏フェス用のパンツ」として見せ方を変えてLPを運用した結果、売上が急増。せいぜい月1〜2本の売れ行きが、施策開始から約2ヶ月で月300本ほどまで改善されました。
この事例では、使用シーンの想起をはじめとする「文脈作り」がいかに大切か分かる結果となりました。
子供遊び場用の砂利:放射線検査で安全性をアピール
次は、子供遊び場用の砂利を、月400万円ほど売り上げた事例を紹介します。
当時は、東日本大震災をきっかけに放射能の健康被害が騒がれていました。そこに目をつけて作ったのが、ただの砂利ではなく「放射線検査を行い、基準値をクリアした砂」です。
2年間かけて「子供たちのための安全性の担保」というUSP・見せ方を確立した結果、消費者のニーズに刺さり月400万円前後の売上を記録しました。
この事例では、市場調査の段階で「いかに消費者の潜在ニーズに気づくことができるか」が重要であることが分かる結果となりました。
ヘアケアブラシ:狭いマーケットで立場を確立
この事例は、USPは明確にあるもののマーケティングがうまく行っておらず、売上に伸び悩んでいたケースです。
「有名ブランドの美容師が作った」というUSPがあったものの、立ち上げ当初は思ったように売上が伸びていませんでした。
そこで、下記の2つの施策を行なった結果、新規立ち上げから1年で年商1億円ほどにまで成長しました。
- 「ヘアケアブラシ」という固有のワードを作る
- コスプレイヤー・人形マニアなどのニッチなマーケットでギフティングを行い認知を取る
「ヘアケアブラシ」と聞いた時に第一想起させられるよう固有名詞を作りました。そして、ポジションを狭いマーケットでとり、認知拡大を狙った結果、成功した事例です。
商品自体にUSPがあってもうまく行かないケースももちろんあります。そういった時は、商品の見せ方・マーケットの選定に立ち返ってみることで、解決策が見えてくるかもしれません。
- すでに商品は出来上がっているが、
- 商品の魅力が伝わらず売り上げが上がらない
上記のような課題を抱えている方は、ぜひ弊社にご相談ください。マーケティングのプロが、さまざまな視点から売上UPのお手伝いをさせていただきます。
ブランド立ち上げの失敗例は?
ここからは、ブランド立ち上げが失敗する原因を紹介していきます。失敗要因は必ずしも1つだけではありませんが、ボトルネックとなる箇所はあるはず。
もし、あなたのブランドの商品が売れていないのであれば、当てはまっていないか1つずつ確認してみましょう。
流行っている商品を企画段階から作り始める
トレンドがきている商品を企画から行うのはあまりおすすめできません。理由としては、商品が出来上がる頃にはトレンドが終わっている可能性があるためです。
通常、商品企画からプロダクトリリースを行うまでには最短でも4ヶ月はかかると言われています。トレンドは流動性が高いため、企画から行なっているとタイミングを逃してしまうのです。
USPが明確ではなく切り口が見えない
前述している内容ですが、USPが明確でないと商品を魅力的に見せることは困難です。
たとえば、下記のAとBのペンがあった場合、どちらが売りやすいでしょうか?
A:どこにでもあるペンです
B:ノーベル賞を取った学者が考案したペンです
もちろん、Bですよね?
USPが決まっていないとは、極論を言えば上記の例の「A」のようなものなのです。
見せ方だけで売れるケースもありますが、商品のUSPを定めた上で商品設計を行い、消費者のニーズに刺さる商品を作ることが重要です。
ブランド立ち上げを成功させるためのコツは?
最後に、ブランド立ち上げを成功させるための施策の一部をご紹介します。適切な戦略・体制を整えることで売上を増加させましょう。
マーケットプレイスごとにオリジナル商品を販売する
販売戦略の1つとして、マーケットプレイスごとのオリジナル商品を用意することも効果的です。「限定」という言葉をちらつかせることによって、「スノッブ効果」が働きます。
スノップ効果とは、「他の人とは違うものが欲しくなる」という思考を利用した戦略で、商品に限定という独自性を持たせることで購買意欲を促進させることができます。
「コストコ限定カラー」「Amazon限定カラー」など、チャネルごとに差別化をしていくことで、通常リピートしない商品に対するリピート購買意欲も掻き立てることができるでしょう。
【番外編】最適な物流会社・ECシステムを導入する
予算があまりない場合は、フルフィルメントサービスやコスパのよい倉庫・物流業者を選ぶのがおすすめです。しかし、順調に売上が立つようになれば、物流業者の切り替えも検討が必要です。
理由としては、商品数・販売数が増えてくると管理が難しくなり、効率が悪くなっている場合があるからです。
- 出荷波動(季節ごとの出荷の波)に耐えられなくなってきた
- セット売りに柔軟に対応できていない
上記のような状態だと、物流を最適化できていない可能性があるので、物流業者の見直しをおすすめします。
まとめ:USPの明確化がブランド立ち上げ成功のカギ!
この記事では、ブランドの立ち上げを成功させるために必要な考え方や成功事例を紹介しました。ブランドの立ち上げ成功のカギは「USPを一言で語れること」です。他社商品ではなく、自社商品を選ぶ理由を明確にすることがとても重要といえます。
USPを考える際は、下記のようなフレームワークを活用してみましょう。
- 自社の強みや弱みを洗い出したい場合に最適:3C分析
- 企業課題の発見・経営戦略の策定に最適:SWOT分析
- マーケティングの課題を洗い出したい場合に最適:4P分析
- 原因追求を行う時に最適:ロジックツリー分析
ブランド立ち上げをおこなっているものの、USP・独自の切り口が思い浮かばない方は、ぜひ弊社にご相談ください。さまざまな経歴・知見を持ったコンサルタントが、ブランド立ち上げ成功のお手伝いをさせていただきます。